旅と暮らしの日々 by sato tetsuya


今日の旅、昔の旅、そして狭間のよしなしごと。
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硫黄島最後の夜に起きたこと。

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硫黄島の最後の夜。
この日は昼から雨が降り続け、
たまに晴れ間が見えたかと思って、
いそいそと島内散策に出れば、
それまでよりさらに強い雨に遭って、
足元をビショビショにしてテントに逃げ帰るありさま。
こりゃあ、残りはテントのなかで読書かなあと、
なかばあきらめながら酒を呑んでいると、
夕刻、突然テントの外で声がした。
「サトウさーん、家で一緒に酒呑みませんかー?」
島の人間で、
僕がここでキャンプをしていることを知っている人は多いけれども、
(なんせ、まったく面識のないおばあちゃんに集落でのすれ違いざま、「雨のなかのキャンプ、大変でしょう」と気遣われたくらい)
僕の名前が佐藤だということを知っている人はほとんどいない。
ちょっと驚いたけれども、実は意外ではなかった。

話は硫黄島到着前夜に遡る。
硫黄島行きの船に乗るには、
東京からだとどうしても鹿児島に前夜泊しなくてはならず、
僕もそれならばと、
天文館界隈をぶらぶらしつつ一軒の居酒屋に入った。
この居酒屋が、
老夫婦がふたりで切り盛りしているカウンターだけの店で
またよかったのだけれど、
その話はまた別の機会に。
薩摩焼酎を呑みながら旬のカメノテや自家製コノワタをつついていると、
隣りに座ったおじさんが話しかけてきた。
「おにいさん、旅行かい?」
「はい、明日から硫黄島に行くつもりです」
「硫黄島、 なんで!?」
前にもブログで書いたけれど、
単なる旅行で硫黄島に行くというのはちょっと珍しいことらしい。
まあ、そんなことを話していると、
おじさんはいきなり携帯電話を取りだして話し始めた。
「おお、○○? 今島にいるの? あのね、明日の船でサトウさんていう人が島にキャンプに行くからよろしくね」
ええーっ!
聞くとこのおじさんは学校の先生で以前、硫黄島の隣りの竹島だか黒島に赴任していたらしい。その関係で硫黄島にも知り合いがいるとのこと。
でもね、相手は戸惑うだろうよ。
いきなり電話一本で見ず知らずの人をよろしくって言われてもね。
そんなわけで僕のほうもそれほど真に受けてはいなかった。

そう、そのとき「よろしく」された彼が、
最後の夜に酒に誘ってくれたのだった。
彼の部屋に行き、さっそく薩摩焼酎で乾杯。
「いやあ、どうしようかと迷ったんですよ。あえて一人で来ているということは、一人でいたいのかなと思って……」
よくわかる。
50過ぎのおっさんが、ド平日に一人でキャンプをしていたら、
僕でもなかなか声をかけづらい。
その後、これまでの馴れ初め(?)を話し、島の自然の話をし、
島の人の話をし、そして自分たちの話をした。
今年31歳になった彼も、
この島に生まれ育ったわけではなく、
もともとは沖縄の島の出身なのだとか。
次第に酔っていくなか、
僕はこれまで旅した場所について語り、
彼は自分の夢について語ってくれた。
「いつかね。漁船を手に入れて、魚を釣りながらそれで故郷の島に帰るのが夢なんですよ。」
おお、なんと素晴らしく、羨ましい夢。
硫黄島の最後の夜、
僕はそれまでの硫黄島滞在のなかで、
一番大きな力をもらった気がした。
鹿児島県。2016年。
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by apolro | 2016-04-14 10:28 | 旅の日々 | Comments(0)
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