檜原村の湯久保集落に行って見たかったのにはほかにも理由があって、
それは湯久保という地名につく「湯」の漢字。
地名に「湯」の字がつく場所は、
えてして温泉に関係があることが多い。
そして以前なにかの文献で、
湯久保にも過去に温泉があったという記述を見た気がしたのだ。
しかし、現在の湯久保界隈には温泉はない。
地図にも温泉マークはない。
手元の書籍をひっくり返しても、
ネットで検索をかけても、
それにまつわる資料はなし。
あれは単なる思い込みだったのかと、
自分の記憶にも自信がなくなっていて、
それもあって今回現地を歩いてみた。
けれどもそれでもヒントは見つからず、
やっぱり思い違いだったのかと思いながらも、
帰り際にものは試しと寄ってみた檜原村の郷土資料館で、
あっさり答えは見つかった。
それは受付で見せていただいた、
『檜原村村史』という分厚い書籍のなかにあった。
やはり過去には湯久保集落の南を流れる湯久保沢沿いに源泉があり、
その温度はゆで卵できるほどだったらしい。
湯久保の地名もそこから発祥しているとのこと。
もしかしたら、
湯久保は本来「湯窪」なのかもしれない。
残念ながら明治中期から徐々に湧出が止まってしまったそうだ。
案の定、湯久保は温泉がらみの地名だったのだ。
村史には湧出していた場所も明記されていた。
そうなるとまた、
その場所を確認してみたくなるわけで、
暖かくなったら沢登り、
あるいはヤマメ釣りにかこつけて行ってみようかと思う。
東京都。2017年。