2017年 03月 14日
『貧困旅行記』にあった犬目宿を訪ねて。
というより犬目宿に興味があったので扇山に登った、
といったほうが正しいでしょう。
犬目宿は旧甲州街道に設けられた古い宿場町。
漫画家のつげ義春が『貧困旅行記』のなかで、
二度も目指したのにいけたかどうか定かでないと記している集落で、
一度行ってみたいと思っていました。
けれども歩いてそこだけ目指すのもなあと思い、
山とセットにしてみたわけです。
彼が歩いたころはいざ知らず、
GPSが世界を網羅する現代において、
車道が通じているのに行けない場所なんて、
残念ながらそうそうないでしょう。
下山路の分岐にさえ、
しっかり「犬目」と明記されておりました。
下ること1時間。
県道に飛び出して、
それまで山腹にうねるようにつけられていた道が、
急に真っ直ぐと延び、
周囲には肩を寄せ合うように軒を連ねています。
日曜日だというのに車の往来も少なく静かなものです。
この界隈を通る車のほとんどは中央自動車、
あるいは下を抜ける新しい甲州街道を通るのでしょう。
宿のちょうど真ん中に、
最近立てられたと思しき「犬目宿」の石碑があり、
その後ろに控えるように、
集落で唯一の商店「犬目直売所」がありました。
なかには店番のおばちゃんがひとりと、
茶飲み話に来たのであろう近所のおばちゃんがもうひとり。
店内には畑で穫れた野菜や手作りの漬け物、
ゆずジャムなどが並べられていました。
「山からの帰りですか?」と訪ねられたので、
「はい!」と答えると、
「冷えたビールもありますよ」とのこと。
さすが山帰りがなにを欲しているかわかってらっしゃる!
ビール片手に店内の椅子に座らせていただき、
犬目宿の話をうかがっている間にも、
「並んでいる漬け物の試食品、肴代わりに食べてね」と
次々にすすめてくれます。
どれも美味しく、
しかも100〜200円程度という安さ。
ちょうどビールが空きそうなころに、
新たな登山者が店にやってきたので、
入れ替わるように犬目宿を後に。
旧甲州街道を鳥沢駅を目指して歩きだしたのでした。
山梨県。2017年。