『ウルトラマン』のファーストシリーズの登場した怪獣のなかでも、
ブルトンはひときわ異彩を放つ怪獣だった。
手もなく足もない。
それどころか頭すらなく、
雄叫びもあげない。
宇宙から飛来した隕石がその出自とされ、
周囲の人や物を自在に四次元空間に放り込んでしまう。
見慣れた扉がいきなり遠い場所や異形空間につながったりして科学特捜隊を大混乱に陥れた。
攻撃も苦にしない。
ボディのフジツボみたいなところから繊毛のようなものを出してチョイチョイと震わせれば、
戦車は空に舞い、
戦闘機は地面を這いずる。
子ども心にも、ほかのパワー系怪獣や頭脳派宇宙人とは異なる振る舞いに不気味さを感じたものだ。
なにを考えてるのかわからない、
あるいはなにも考えていないのかもしれないということが恐怖の源泉にあったのだろう。
当時の子どもには「四次元」というやつが大流行だった。
通常の三次元世界よりさらに次元がひとつある謎の空間。
そこへの入口はどこかに唐突に現れ、
うっかりそこに落ち込むと二度と三次元には戻ってこられないと考えられていた。
目の前を走っていた自動車が急に消えてしまったなんていう体験談を、
震え上がりながら読んだ記憶がある。
「魔のバミューダ海域」なんてのもそのいい例だった。
最近はあまり耳にしなくなったのは、
さんざんしぼりきって出汁もでなくなったからか、
みんな知恵をつけてきてもう少し説得力が必要になってきたからか。
「虚数空間」とかね。
この怪獣ブルトンの名前が、
シュール・レアリスト宣言で知られるアンドレ・ブルトンから取られたらしいと知ったのはずいぶん後のことだった。
そしてなぜかうちにはブルトンのソフビがある。
なぜかって自分で買ったんだろうけど。
東京都。2026年。