2010年 11月 06日
『釣りの風景』を読んだ。
元編集者の作家で、昭和30〜40年代の東京近郊の淡水魚釣りに関する随筆を
まとめたものなのですが、これがしっとりとしていて
読んでいてまことに心地よいです。
オイカワやヒガイ、タナゴといった魚たちに関する愛情が釣りを通して
細やかに語られています。
興味深かったのが、その時代、場所によっては
今よりも水質汚染で壊滅的な状態になっていたこと。
霞ヶ浦などは「とうとう釣りに行くのを断念した。汚染がひどく、湖中の魚の半分が病魚というニュースを知らされては」と綴られています。
たしかにそのころは高度経済成長のど真ん中で、
公害もメチャクチャな時代でしたからね。
まあ今は今で、外来魚など別の問題が深刻ですが。
外来魚といえば、『釣りの風景』のなかに「大タナゴ」とい短編があり、
昭和30年代に中川の八条橋で、ヤマベ釣りの外道で
12㎝のタナゴを釣ったことが驚きとともに記されているのです。
まさかその時代に、現在の中国産オオタナゴがいたとは思えませんが、
中国産のソウギョやアオウオが戦争中に利根川水系に放流されたことを鑑みると、
まじって入っていたとしてもありえない話ではないのかもしれません。
東京都。2010年。