2016年 03月 10日
屋久島の「なっちゃん食堂」。
自転車で激坂を登って再び汗まみれになりました。
体力を使って温泉でまったりすると、
当然、次に刺激されてくるのは食欲ですな。
どこかに様子のいい食堂はないかなと自転車を走らせるわけですが、
まあ、島の国道沿いには、
食堂どころか商店ですら見かけません。
でも僕は知っている。
地元の人が利用する店なんていうのは、
集落のなかにあるということを。
で、次の小さな集落が現れたときには、
国道から集落のなかへ向かう細い路地へ入ります。
ちょっと走ったところで、
ね、ほらあった。
年季の入った店構えも、
「なっちゃん食堂」という店名もよろしいじゃありませんか。
店内は長テーブルが二つ並ぶばかりの、
決して広いとはいえないお店です。
出てきたおばあちゃんに、
まずはビールをお願いすると、
どういうわけか店の外に出ていってしまいました。
店内が狭いから外に冷蔵庫があるのかなと思い待つことしばし。
戻ってきたおばあちゃんの手にはしっかりと大瓶のビールが。
「今、酒屋さんから買ってきたばかりだから冷えてるよ!」
なるほど!そういうことですか!
不良在庫を抱えない究極のシステムですね。
メニューはとくに島の名物料理を出しているわけではなく、
カレーやフライ、とんかつ定食など、
いわゆる定食屋さん。
奥のほうでは大きな銀皿に大量の薩摩揚げ
(こちらでいうところの「てんぷら」ですね)
などを盛りつけていたので、
近所のお祝い事で仕出しの注文があったのかもしれません。
魚卵を煮つけたものですね。
ムロアジかなにかでしょうか。
太めの麺で量は意外と少なめですね。
おばあちゃんが出てきて、
パッションフルーツをサービスで出してくれました。
聞くところによると、
このおばあちゃんが「なっちゃん」なのだそうです。
最初はこの集落には食堂なんてほかにないんだし、
店名なんて気にしなかったそうなのですが、
近所の人たちが「なっちゃんの店」「なっちゃんの店」と呼ぶうちに、
そういう店名になったそうです。
「昔はね、大阪あたりの百貨店でやる、地方の名産品市みたいなのに呼ばれて行ったもんでね。そこで一、二を争う売り上げを上げたこともあったけど、大変だし、往復の交通費で足がでちゃうからやめちゃった」
と、懐かしそうに昔話をしてくれました。
売っていたのはやっぱり薩摩揚げなんでしょうか。
現在は息子さんと二人でこのお店を切り盛りしているそうです。
もっと話を聞きたかったのですが、
そろそろ帰りの飛行機の時間も気になってきたので、
ごちそうさまをして店の外へ。
おばあちゃんのことを考えながら、
この海を眺めていたら、
あれ、なんだか急に泣けてきてしまったんですけど。
いったいこの感情はなんなのだ?
鹿児島県。2015年。