2017年 12月 20日
季節外れの果樹園にて。
そこは芦ヶ久保。
駅の南側には日当たりのよい、
なだらかな緩斜面が広がっていて、
その地形を利用して何軒もの農家が果樹園を経営し、
芦ヶ久保果樹公園村なんて呼ばれてもいる。
もちろん12月も半ばを過ぎると、
さすがに果樹園は休業状態だ。
年を越えて一月に入ると、
今度は苺狩りが始めるらしいが、
それもまだ先の話。
その果樹園のなかを登っていく。
アーケードをつくっていた。
季節外れに来たハイカーにも、
少しでも果樹園の雰囲気をという、
農家のかたの心遣いだろうか。
そんな小さなできごとが、
冬の静かな低山ではうれしい。
道はすでにあらかた舗装路になってしまっているが、
ときおり九十九折りをショートカットするかたちで
現れる山道が心地よい。
足元には落ち葉が幾重にも積み重なり、
かしゃかしゃとそれを踏む音も、
冬の低山を歩いていることを実感させてくれる。
やがて道は尾根上を渡るようになり、
しばらくすると山頂の指導標が現れた。
日向山。
これ以上この山に相応しい山名もないだろう。
師走の平日にも関わらず、
山頂にはひと組の老夫婦と、
ひと組の子連れ親子が、
風もない絶好の日差しを満喫していた。
そして、山頂標の写真を撮るにあたって初めて気がついた。
「あ、この山の標高、僕の誕生日と一緒だ」
埼玉県。2017年。