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渡し船部2018年活動再開、『小堀の渡し』その2。

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取手にある渡し船、
『小堀の渡し』の船着き場までやってきた。
10分ほどで出航とあって、
船着き場にはすでに粋な船頭のおじさんが待機していた。
僕がカメラを構えていたので、
おじさんは「いい写真撮れた?」と、
声をかけてくれる。
「いやいや、この渡し船の写真を撮りに来たんですよ」と答えると、
おじさんもちょっとうれしそうだ。
そりゃそうだよね。
いくら出港時刻とはいえ、
誰も乗らない船を運航させるのはむなしいだろう。
就航までまだ少し時間があったので、
おじさんにいろいろ話を聞く。
まず一番気になっていたのは、
なぜ「小堀」と書いて「おおほり」と読むのかということ、
このへんは昔から大雨が降ると利根川があふれ、
水が引いたあとには、
あちこちに小さな掘状の水溜まりが残っていたとのこと。
この小さな掘ほことを地元では「おっぽり」と呼び、
それが転じて「おおほり」と読むようになったのだとか。
おじさんは「あくまでも親方に聞いた話だけどね」と、
断りを入れたうえで教えてくれた。
やはり天下の板東太郎、利根川である。
暴れるときには暴れるのだ。
「多いときにはどれくらい増水するんですか?」と尋ねると、
「去年の秋に、二週続けて台風が来たことあったでしょ。あのときはね、この小屋が完全に水没したよ」と言いながら、
船着き場にある待合所兼道具置き場のような小屋を指差した。

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これが完全水没か。
言葉が出ない。

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小屋の外壁についている何本もの線。
これは刻々と増減する川の水量の跡なのだそう。
「ほら、屋根の角が凹んでるでしょ。あれは船の操船をしくじってぶつけちゃったんだよね」と、
ちょっと照れくさそうに教えてくれた。

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一瞬、そんなときにも渡しは就航するのかと思ったが、
さすがにそんなわけない。
しかし、それでも増水状況によって
常に船を移動させなければならず、
そんなときは不寝番で船を動かすのだそうだ。
言われてみればそうだ。
船が流されても困るし、
逆に土手に乗り上げられたまま水が引いてしまったら、
今度は重機を持ち出して川まで戻さなくてはならなくなる。
船の維持管理は想像以上に大変なのである。
ちなみにそのときは、
ひと月ほど渡し船は欠航になったそうだ。

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小屋の脇にあったこの切り株。
これはもともと枝振りのよい柳の木で、
夏には船待ち客に絶好の日陰をつくってくれていたのだが、
この木も昨年の台風時に増水で折れてしまったそうだ。
「残念だけど、柳は生長が早いからね」と、
その近くに新しい柳の苗が植えられていた。
それが、この渡し船をこれからも続けていく決意のように感じられて、
なんだかうれしい。
「さあ、そろそろ出航の時間ですよ!」
そういうと、
おじさんは桟橋に掛けられていた鎖を解いてくれた。
いよいよ、いよいよ乗船だ。
(「その3」に続く)
茨城県。2018年。
by apolro | 2018-02-23 11:00 | 渡し船部 | Comments(0)

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