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食堂の佇まい。新宿の『長野屋』。

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新宿駅南口を出て、
左手に下っていくと目の前に現れるのが、
この『長野屋』。
1996年に高島屋、
そしてタイムズスクエアが開業してから(もう20年以上たつのか!)、
南口もすっかりオシャレなエリアに変貌してしまったが、
もともとこの界隈は雑多で猥雑な街だった。
そして、当時の面影を今に残す数少ないランドマークがこの『長野屋』。
暖簾をくぐると、
いきなりあの頃の空気感が蘇る。
まだ明るい時間だが、
すでに数人のおじさんが日本酒の杯を傾けている。
基本は定食屋なのだが、
おかずだけの注文も可能で、
それを肴に宴はもう始まっているようだ。
まだ酒場が開く前の時間、
ぼくも含めておじさんがひとりでふらりと入れる店は、
このへんでは意外と貴重になってしまったのかもしれない。
このところ忙しくてちゃんとした食事を摂っていなかったので、
ちょっと奮発してカキフライ定食を注文。
やがておばちゃんが、
「ごめんね、今日のカキはなんか身が小さくて……」と、
申し訳なさそうに運んできてくれた。

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タルタルソース代わりなのだろう、
大きなマヨネーズのボトルを、
そのままテーブルにごろりと置いていくのが、
なんだか定食屋っぽくてうれしい。
テレビでは相撲が中継されていて、
おばちゃんは常連のお客さんとなんやかんやと話している。
「この力士は長野出身だからね、おかみさん好きでしょ!?」
という常連の問いかけに対し、
「たしかにうちは『長野屋』だけど、長野から出てきてここに店を出したのは先々代だからね。あたしたちはもう江戸っ子よ」と答える。
聞けば開業は大正4年とのこと。
だんだん盛り上がる相撲中継を後に店を出ると、
目の前にはクリスマスが近いことを感じさせる黄昏時が広がっていた。
東京都。2018年。
by apolro | 2018-11-16 11:28 | 酒場、食堂の佇まい | Comments(0)

今日の旅、昔の旅、そして狭間のよしなしごと。

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