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与那国島の廃道を旅する。その5。

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崖の直下に流れていた用水路を渡り、
太ももまで泥まみれになった脚をその用水路で洗い、
シューズを履きなおして崖を見上げる。
下のほうは一面を草木が覆っているので、
細かい状況はわからないが、
上のほうはかなり急峻だ。
遠くから眺めているときは、
あの崖の中腹に車道が通っているのではと、
都合のよいことを考えていたが、
あらためて地形図を確認してみるとそれは甘かった。
道があるのは、
どうひいき目に見てもあの崖の向こうだ。
それでも、
とりあえず行けるところまで行ってみようと、
このジャングルのような崖を登りはじめる。
ちなみにここから先は写真がない。
すでに両手両足をフル稼動させないとならない状況になっており、
カメラはリュックに収めざるを得なかった。
アミダくじを進むように右へ左へと進路を修正し、
なんとか緩やかな斜面を見つけて、
少しずつ高度を稼いでいく。
一見堅そうに見えた島の樹木は、
もろくパキパキと簡単に折れ、
地面から生える巨大なクワズイモは、
その名の通り根っこが芋なので、
足をかけるといとも簡単に抜けてしまい、
どちらも手がかり足がかりには向かない。
行きつ戻りつを繰り返し、
なんとか20メートルほど登ってところで、
眼前に現れたのはゴツゴツとした
隆起サンゴ由来と思われる石灰岩のオーバーハングだった。
凹凸はあるのでホールド、スタンスには困らないだろうが……。
左右に逃げ道もない。
イケちゃうんじゃね? と調子づく自分を、
ちょっと待てと、もうひとりの自分がたしなめる。
もし途中で力尽き、あるいはしくじって、
墜落したらタダじゃすまないな。
たぶん骨折、最悪死ぬ。
さらに、仮にこのオーバーハングを突破できたとしても、
その先がどうなっているかは、
行ってみなくてはわからない。
もしそこにもっと厄介な状況が待っていたら、
ここをクライムダウンで降りてくる技術、体力は
僕にはとうていない。
しかも僕がこんなところにいることも、
島の誰も知らない。
宿泊客が夜になっても帰ってこないとなったら、
島の人はまず海を捜すはずだ。
南の島に来た旅行者がまさか内陸の湿地帯にいるとは思うまい。
……。
潮時だな。
冷静なほうの自分が言った。
宿へ戻ろう。
ここまで登ってきた崖を注意深く下って、
もういちど用水路を越えて、
湿原を渡り、
ヤブ漕ぎで再び道を作り、
宿へ戻ろう。

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今夜のオリオンビールは、
ひときわ美味いに違いない。
って、ただの農道散歩なんだけどね!
(解答編へ続く)
与那国島/沖縄県。2019年。
by apolro | 2019-03-28 10:02 | 旅の日々 | Comments(0)

今日の旅、昔の旅、そして狭間のよしなしごと。

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