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銭湯行脚五十二湯目、横須賀『当り湯』。

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京浜急行の横須賀中央駅から上町商店街の坂道をずんずんと上っていく。
道の両側にはずいぶんと長くやっていそうな商店が建ち並ぶ。
その昔、三崎方面から海産物を運ぶ道として栄えたのだそうだ。
その商店街が切れ、
やがて道がY字で分かれたところを右へ入ると『当り湯』は建っていた。
いかにも歴史がありそうな店構え。

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「男」と直接曇りガラスにペンで書かれたドアを引く。
ドアの高さが170センチくらいしかない。
中に入ると左手に番台。
「貴重品はロッカーに入れておいてください」といわれたので、
あらためて脱衣所を見渡すと、
たしかに脱衣籠に衣類を入れっぱなしにしている人が多い。
浴室には洗い場が15基ほど並び、
奥には浴槽がふたつ。
その上の銭湯絵には、
白川郷にあるような日本の伝統的家屋が描かれ、
奥には山脈が連なっている。
女湯のほうには富士山が描かれているのが、
仕切りの上のほうに見える。
浴槽のひとつは下から泡がブクブクと湧いている。
そして家庭の風呂のような浅さ。
もうひとつは静水のお風呂で、
こちらはちょっと深め。
どちらの湯温も、ちょっとぬるめで僕にはちょうどよい。
湯上がりにビールを飲みながら番台のご婦人に話をうかがう。
まずは創業年月にびっくり。
今の建物は昭和6年に建てたものらしいのだが、
銭湯としての歴史はもっともっと長く、
ご家族で辿れるだけでも100年は経っているとこのこと。
ちなみにご婦人は四代目。
その先のことになるともう身内でも誰もわからないので、
役場の免許交付の記録にあたってもらったところ、
なんと200年ほどの歴史があるそうだ。
江戸時代じゃないか。
当時は「湯屋」という登録だったらしい。
さすがに建物のあちこちにガタがきているらしいのだが、
修理できる職人ももういなくなちゃってと嘆く。
脱衣所の天井は格天井で、
いまはただマス目が切ってあるだけなのだが、
以前はそこにすべて絵が描かれていたそうだ。
さらには屋根のてっぺんにはシャチホコが据えられていたというからすごい。
建て替えたらという話もあるらしいのだが、
そうすると法律上、前の道からある程度引っ込ませないとならないので、
どうしたって今の状態では残せないとのこと。
ちなみにこのあたりは谷戸地形なので、
水が豊富で銭湯を経営するには都合がよかったらしい。
さらには僕が来るときに歩いてきた道は、
昔は不入斗川という川が流れていて、
排水にも便利だったのだとか。
百年銭湯どころか二百年銭湯の可能性もある、
『当り湯』なのだった。
神奈川県。2019年。
by apolro | 2019-06-04 10:55 | 銭湯行脚 | Comments(0)

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