大阪市の中心地である船場界隈には
オフィスビルが建ち並び、なかなかこぢんまりとした酒場と出会わなかったところで、
ひょっこり現れたのがこのお店。
入口の品書きに大阪産のお酒が羅列してあったので、
旅の者としてはうれしくなって扉を開ける。
小雨交じりのまだ早い時間だったせいか、
店内には常連とみられる女性客がひとりのみ。
大阪のお酒というのはあまり馴染みがないので、
まずはオススメのものを出していただく。
壽酒造という高槻の酒蔵が造る『カエルラベル』というお酒。
美味しい。
この酒蔵の名前は知らなかったが、
ここが出している『国乃長』という銘柄は見たことがある。
この名前が染め抜かれた暖簾もあったような。
あと地ビールも出してますね。
肴には大阪名物?の紅ショウガ天を注文。
出てきたものを見てちょっと驚く。
東京でもたまに見かける紅ショウガ天は、
千切り紅ショウガをかき揚げ状にしたものが多いけれど、
こちらのはズバンとスライスしたものをそのまま揚げている。
ボリュームがすごい。
これが大阪スタイルか。
もうひとつはクリームチーズと酒粕のディップ。
お酒に合わないはずがない。
一杯目が早々に空いたので、
もう一杯だけと頼んだのが秋鹿酒造の『千石谷』。
秋鹿酒造は大阪能勢町の酒蔵だそう。
東京ではあまり見かけないけれど、
大阪にも美味しいお酒はたくさんある。
「近くに酒どころが多いんで、大阪の人はなかなか大阪のお酒を飲んでくれなくて……」と、
おかみさんは笑いながら嘆く。
『越冬』という店名もなんだかお洒落だなと思ったら、
こちらはお店を切り盛りしているご夫婦のお名前(旧姓だったか?)から、
ひと文字ずつ取っただけとのこと。
その気取りのなさもよいですね。
じっくり長居ができる時代がまた来たら、
今度はもっともっと食べたり飲んだりしたものと思いつつ、
席を立った。
大阪府。2021年。