
うちのはす向かいに古い洋館があった。
30年前に高円寺に引っ越してきたときから気になっていた建物で、
いかにもな昭和初期の和洋折衷様式といったらいいんだろうか。
ゲーム『バイオハザード』の舞台になった家を思わせもした。
聞けば昭和元年に建てられたものらしい。
まさに100年住宅だ。
「いつかこの家に住めないかなあ」などと勝手に妄想を膨らませたりもした。
その家の門に不穏な張り紙が掲げられたのは昨年末のこと。
もしやと思って近寄ってみればそれは解体工事を知らせるものだった。
正月明け早々から解体を始める旨書かれていたが、
実際には門松が取れる時期になっても様子に変わりはなく、
なにかの事情で解体は中止になったのではと期待も寄せたが今のご時世にそんな甘い話はなかった。

ある日重機が搬入されてメリメリと家屋を破壊。

日を追うごとに往年の面影は失われていく。

その過程でこの洋館が木造だったことも知る。

雪で一時工事が止まったこともあったがすぐに再開。

やがて家屋は完全に撤去され
残るは敷石や塀のみに。

そしてついには完全な更地に。
跡地にはまた薄っぺらい一戸建てが何軒か建つんだろうか。
建物に寿命があるのはしかたがないとはいえ、
それに付随する記憶までが失われてしまうのがなんとも惜しい。
高円寺の町からまたランドマークがひとつ消えていった。
東京都。2026年。