
昨年末、川越での忘年会に参加したとき、
田んぼ仲間の五十嵐さんから「おもしろいよ」と一冊の文庫本を勧められた。
タイトルは『赤い風』。
カバーのイラストから判断するに歴史小説のようだ。
カバー裏のあらすじを読んでみると、
「武蔵野原野は赤土で水源に乏しく……」
「川越藩主柳沢吉保は荒野の開墾を命じる……」
あれっ、これってもしや。
目次を開いてみるとそこには三富(さんとめ)新田の地割りの図面が。
やっぱり。
これって三富新田を舞台にした物語じゃないか。
三富新田というのは現在の川越市の南、
所沢市と三芳町の市境に位置する農地だ。
土はやせ、
近くには川もなく、
江戸期までは秣場としてしか用途のなかった荒野だった。
江戸期にようやく川越藩の所領となり新田開発されたのだった。
特徴的なのは一軒あたりに割り振られた地割りの形状で、
間口72m、奥行き675mという極端に細長い土地。

三富新田は今日も当時のそんな様子を残しており、
そこに興味を持った僕は『東京発半日徒歩旅行 調子に乗ってもう一度』の執筆にあたって、
現地をじっくり歩いてみたのだった。
『赤い土』には当時の様子と苦難の歴史がていねいに描かれている。
こんな本が出ていたのかー。
僕も取材に行く前に読んでおくべきだったなと後悔したが、
よく見れば『赤い土』が刊行されたのは2021年と、
僕が出向いてから2年の後のことだった。
五十嵐さんはそんなことはまったく無頓着に勧めてくれたみたいだったけど、
たしかにこれはおもしろい。
三富新田に興味があるひとはぜひご一読を。
ついでに拙著にも目を通していただけるとうれしいです。

2024年に刊行された『完本 東京発半日徒歩旅行』にも再録されていますです。
東京都。2026年。