旅と暮らしの日々 by sato tetsuya


今日の旅、昔の旅、そして狭間のよしなしごと。
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2018年 03月 27日 ( 1 )


2018年銭湯行脚十五湯目、阿佐ヶ谷『玉乃湯』。

f0217617_1115124.jpg
2018年銭湯行脚十五湯目は隣町・阿佐ヶ谷の『玉乃湯』。
この界隈は今までに何度も散歩しているのに、
こんなところに銭湯があるのは気づかなかった。
当時はまだ「銭湯眼」が、
全然養われていなかったのだろう。
引き戸の入口、
脇にはコインランドリーといったあたりは定番だけど、
入口の前に屹立する石柱が興味深い。

f0217617_11152736.jpg
20センチ四方で高さは2メートルほど。
しかも二本もある。
いったいこれはなんなんだろう。

f0217617_11154796.jpg
すりガラスに抜きで「玉乃湯」という文字もシブイね。
入口はフロントスタイルで、
お金を払ってから男女それぞれに分かれてゆく。
べっこう色に染まった脱衣所の天井が歴史を感じさせる。
浴場に入ると飛び込んでくるのが富士山の銭湯絵。
手前には穏やかな海と帆掛け船。
左に小さく「西伊豆」と描かれている。
富士山と海の両方を収めようとすると、
やっぱり西伊豆からの構図になるのかな。
とすると、左のほうに小さく見える街の灯りは静岡あたりだろうか。
銭湯絵の下には近所のお店の看板がふたつほど並んでいる。
そういえば昔の銭湯には、
こういう看板がずらりと並んでいた。
あれはもう過去のものになってしまったのだろうか。
壁から天井にかけては、
群青色、水色、白と塗り分けられていて、
ちょっとエーゲ海の島みたい。
ところどころにはめこまれているイルカのタイル絵もそれっぽい。
浴槽は小ぶりながらも、
リラックスバス(壁と床からジェットバブルが出る)、
ジェットエステバス(ボディーブローのような水流が壁から)、
電気風呂、薬湯、コールドバスと豊富。
湯温は僕にはちょうどよい熱さ。
最近、城東方面の激アツ銭湯に続けざまに入っていたので、
これにはちょっとホッとする。
それぞれの風呂を存分に堪能したところで、
脱衣所に上がってゆっくりと汗を引かせる。
テレビでは大相撲が中継中だった。
帰り際にフロントに座っていた女性に話を聞く。
ここの銭湯がいつからやっているかは定かではないが、
おそらくは戦前からとのこと。
フロントの構造がちょっと変わっていたので尋ねると、
やはり以前は番台形式だったものを改築したらしい。
といっても近代化のためばかりではなく、
万が一、銭湯内で急病人が出たときに、
中まで救急車のストレッチャーが入れることも考えた改築とのこと。
番台からフロント式への変遷にはそんな理由もあるのだな。
入るときに気になった入口の石柱についても聞いてみた。
すると答えは意外にも、
「それが、よくわからないのよ」とのこと。
なんでも銭湯ができるより先に、
石柱はこの地に立っていたらしい。
「ほら、うちの斜め前から脇にかけて、川が流れていたでしょ。それに関係するものかもしれないんだけれど」
なぬ、川?
挨拶もそこそこに外に飛び出して周囲を確認すると、
そこにはまがうことなき川の残滓、
つまり暗渠が延びていた。

f0217617_11162484.jpg
そういえば以前、
暗渠の本を読んでいたら興味深いことが書かれていた。
都市の地下に隠れ潜む暗渠を見つけ出すために、
暗渠マニアたちは銭湯や豆腐屋をヒントにするのだそうだ。
銭湯に豆腐屋、どちらも水をたくさん使う職業だ。
下水が完備する以前には、
排水のために近くに川があることが大事だったのだろう。
ふと銭湯のはす向かいに目を向けると、
そこにはなんと豆腐屋も。

f0217617_11171436.jpg
そういえば神楽坂の熱海湯に行ったときも、
たしか隣りが豆腐屋だったな。
結局、石柱の正体こそわからなかったものの、
銭湯と暗渠という、
一見意味がなさそうなもの同士の関係性を発見したことに、
考古学者ばりにちょっと興奮しつつ家路についたのだった。
東京都。2018年。

by apolro | 2018-03-27 11:23 | 銭湯行脚 | Comments(0)